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2016年12月30日更新 投稿者

三江線に乗ってみた

2018年春に廃線となる三江線。

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と言っても、鉄道ファンでもなければ、知る人は少ないのではないだろうか。島根県の江津と、広島県の三次を結ぶ、108kmの典型的なローカル線だ。日本海に注ぐ、水量豊富な江の川に沿って走る。その特別な景観ゆえに、鉄道ファンには有名な路線で、廃止を惜しむ声も少なくない。実際、今回乗車した15:17江津発の三次行き列車は、カメラやスマートフォン、あるいは、最近珍しい、ポケット時刻表を手にした鉄道ファンが乗客の大半であった。私もその一人だし、そもそも、江津駅で
「だいたい、三次に行くにはどうなるのだ?」
と久しぶりに分厚い時刻表を眺めることになった。

始発の三次行きは江津発6:00。これを逃すと15:17発まで待たなければならない。9時間17分開いている。途中の浜原のりかえを含め、江津と三次をつなぐのは1日3本。これを108kmを3時間半かけて走破する。ちなみに、三江線に沿って走る道路を車で走れば、2時間半程度のようだ。

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実際、車窓は素晴らしい。時折現れる、赤い石州瓦の並ぶ集落に、昔の日本の里山を感じる。江の川と山並みの作り出す風景はどこまでも穏やかだ。確かに、この路線がなくなるのは惜しい。

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しかし、乗車して課題も見えてきた。
生活路線としての乗客はほぼいない。
町の中央に駅が設置されているのは、大きな集落のみ。それ以外は、並列する国道と三江線を江の川が挟んでおり、車を使って駅に来るくらいなら、江津、太田市、三次あたりまで車で行くだろうと容易に推察できる。
何より、線形がきつい。カーブでは減速、動物だろうか急に停車や徐行、線路に木や草がせり出しているのか、ごそごそと列車が擦れる音もする。たった、1日3往復程度のために、この108kmの保守をするというのは、膨大なコストだろう。

生活路線というなら、フリー乗降ができるバスの方が圧倒的に利便性が高い。高齢者ならなおさらだろう。沿線は過疎化が進み、高齢化率も高い。鉄路も道路も保守、というコスト負担は、明らかに人口減少の日本社会の将来の負債を残す。

では観光路線として残せないものか?、と考えたくもなる。
ふと、
「良い店がなくなる理由」
というのを思い出した。

「良い店だ、というが、あなたは、年に何回行きますか?」
という問いだ。
よく考えると、前回行ったのは1年以上前だったりしないだろうか。良い店が惜しいと言いながら、ほとんど使っていない人ばかりだ。良い店がなくなるのはこういう理由だ、という話だ。

観光路線三江線。私は50年近くの人生で、この鉄路の利用は初めてだ。並走する道路は、過去数回はレンタカーで通過している。「廃止」という言葉がなければ、今回、乗車したかも怪しい。
観光路線として残したいという人がクラウドファンディングでもして維持できるか考えてみたらどうだろうか?
あるいは、スイスのように、車の進入は禁止にし、鉄路だけにするのも一案だ。果たして、逆に、それで生活路線として機能するだろうか?
現実的ではないように感じる。

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残せるものなら残したい。でも、道路の整備、相対的な保守コスト、人口構造の変化など、事実は事実として認識し、その上で将来の負担を考えて、
「ローカル線問題」
は考えなければいけない、と感じる3時間半になった。

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